ベトナムへ通うこと14年。はじめて、「取材旅行」という大義名分をいただいて旅をしました。
7か月ぶりのホーチミンは、まるで街じゅうが工事現場さながらの建設ラッシュ。市民劇場からのびる目抜き通りでは地下鉄工事が始まって、道路の一部が大胆に封鎖されてしまった。通り沿いに長年どっしりと構えていた国営百貨店も、今月にはとうとうクローズしてしまうとか。
オープンしたばかりのマクドナルドの前では、いつもと変わらない天秤棒にプラスチック椅子の路上。こんな共存もいつまで続くのでしょうか。
昔ながらのホーチミンが見られるよ、と在住友人に教えてもらって散歩に出かけたあたり。路上八百屋がワイワイとにぎやかに肩をならべ、足の向くままに狭い路地へ曲がれば、生活感たっぷりの団地一景にも出会う。
のんびりした空気がまだまだ健在の、大好きな市場へ買い出しに行きました。果物売り場ではみんな、ハンモックにのっかった売り子さんが基本。ブーラブーラと寝転んで揺られながら、お客が声をかければ「よっこらしょ」と起きあがってきます。ゆるいようでいて、妙に確立されたスタイルに感心。
ホーチミン滞在中に食べたもの。
この街で、私の食欲を圧倒的に独占しているのはヤギ肉。赤身肉とおっぱい肉があり、焼き肉にしてから鍋で〆ます。いつから、なぜこんなに偏愛しているのか今となっては思い出せないけれど、とにかく気がつけば、ホーチミンの食事にヤギ肉は欠かせなくなってしまった。友人たちは、私がくると思い出したようにヤギ肉を食べているという。感謝。
観光客でにぎわうベンタイン市場の脇道には、午後7時をまわると夜市が出ます。常設のフードコートのような屋台でベトナム人に大人気の名物料理は、ゆで豚肉の露干しライスペーパー巻き。ライスペーパーにゆで豚とたっぷりの野菜やハーブを巻き、甘酸っぱいたれにつけて食べます。
おなじみの手巻き料理ですが、このライスペーパーはちょっと特別。普通のものと同じく米から作られているのですが、より厚みがあって、しっとりやわらかな食感。一度天日に干したあと炙り焼きにし、夜霧や朝露にあてて湿気を吸わせるという、ホーチミン近郊の村で作られている名物食材です。
いつものカフェの、いつものアイスミルクコーヒー。どんどん開発されていくまわりの風景にのまれることなく、ひっそり時間が止まったように営業しつづけているここでは、コーヒーの値段が少しずつ書き加えられてはいるとしても、10年前とまったく変わらない寛ぎを得ることができる。
変わりゆくホーチミン。同じくうつろう旅人は、ただただ目の前の風景を受け止め、でも今このタイミングを見逃さないようにしなければとシャッターを押したり、心にこそこそと描き留めたり。
つづく
ベトナム料理教室で、アボカドクリームにココナッツアイスをのせました。ベトナムでは、こんなふうにアボカドを甘くしておやつに食べます。
8月21~27日はベトナム出張のため、不在にします。
ご予約、お問い合わせのメールはいつもどおり受け付けていますが、返信に少しお時間をいただく場合がございます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、ご理解のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
・鎌倉でベトナム食堂と酒場をやります。9月7日です。 詳細
・大阪「ベトナム屋DZO!」とのコラボレーションイベント、第2弾はベトナム地ビール探検。9月20日です。 詳細
8月16日、京都では五山の送り火でした。
送り火は、京都市内にいればいろいろな場所から見えるので、みんながご近所やらどこかに鑑賞スポットをもっている。点火の夜8時前になると、ぼちぼちいきますか…という感じで人が繰り出しはじめて、気軽な雰囲気なのがいいなぁと思う。30分ほどの時間、同じ火を眺めながらめいめいのご先祖さまを思う夜は、毎年変わらない地元の美しい光景と思う。
山が好きだというと、友人はみんな、へええー意外!という。ふだん、うちでぼんやり料理したり文章を書いたり、ご近所の止まり木でビール飲む姿ばかりを目撃されているからかもしれない。
山の先輩はマスターです。
マスターは、喫茶店をやっている友人の師匠で、コーヒーの豆を焙煎している。ときどき自転車をこいで焙煎所へ顔を見せにいくと、おせんべいやチョコレートをすすめてくれながら、地元から日本津々浦々までの大好きな山の話を聞かせてくれる。初めて連れていってもらったのは船山で、京都の西の頂から一緒に市街をながめました。
このあいだ、初めてひとりで鞍馬山にのぼって貴船神社へぬける道を歩き、のんびりした。
おいしい空気や気持ちのいい風は、お金では買えない贅沢。日々楽しく飲めて食べられるよう、体じゅうを動かしてバランスをととのえること。
マスターと一緒に歩いてそう教えてもらってから、ひとりでも歩いてみようと思った。山登りというほどでもなく、Tシャツに運動靴で出かけ、手ぬぐいを首からかけてやすみやすみ、緑を見たり写真を撮ったりしながら散歩するだけ。
山にいると、困りごとはたいていなんでもないことになると知りました。
鎌倉で1日ベトナム食堂&酒場をやります。9月7日(日)のオープンです。
詳細こちら
夏のお昼はツルツルと麺料理。
ベトナム料理教室で作った、焼き肉のっけ和え麺。香ばしい焼き豚肉がどっかりのりますが、それ以上にレタスやハーブ、なますなどがのっかり、甘酸っぱいたれをかけてまぜれば、実にさっぱりと完食できます。
夏場のレッスンは、なるべく体がスーッと涼しくなるような、シャキッと元気になるような、味にも見ためにもメリハリのあるメニューをとり入れています。和え麺やつけ麺が浮かぶようになると、冷やし中華はじめました、の気分。
鎌倉で1日ベトナム食堂&酒場をやります。9月7日(日)のオープンです。
詳細こちら
【日時】9月7日(日)
★昼=11:00〜14:00
【場所】古民家スタジオ・イシワタリ 1階和室
場所の詳細は こちら
【メニュー&料金】
★昼の定食・・・2000円
主菜2品から1品をセレク
主菜(豚肉と卵のベトナム風角煮 or 揚げ魚のトマトソースがけ)、野菜たっぷりの副菜3品、
★夜のおつまみセット・・・3000円
ベトナムおつまみ各種から5品、お通し付き
(えびと豚肉の生春巻き、オクラの腐乳ソース、五目蒸し
★アルコール・・・500円〜 ソフトドリンク・・・4
【ご予約方法】
ご予約・お問い合わせはメールで受け付けています。
at-takayaアットマークsage.ocn.ne.jp(
※迷惑メール防止のため、上記アドレスはクリックできません。「アットマーク」を「@」に変えたアドレスへメールをお送りください。
※ご予約の際は、以下の必要事項をもれなくご記入ください。
★お名前
★人数
★ご来店時間(夜の予約は17:30
★電話番号
★メールアドレス
今日のベトナム料理教室は家庭料理を作りました。
肉詰めした厚揚げ豆腐をトマトソースで煮こんだおかずに、みなさん興味津々。甘酸っぱいフレッシュなトマトをたっぷりと吸いこんだ厚揚げから、ジュワワーと肉汁がにじみ出ると幸せな気分。
ベトナムはお米が主食の国なので、白いごはんと食べるおいしい料理がたくさんあります。ベトナム人のふだんの食卓は、煮魚や焼き魚、豚を甘辛く炊いたのや、青菜炒めや卵焼きやお豆腐料理などをならべ、具だくさんのスープもつけて、とにかくたっぷりとお米を食べる。ラフで肩の力がぬけていて、どこまでもおおらかな味わいに、家庭料理の姿って世界共通やなぁと思う。
昨日の日記に雨林舎さんのことを書いたら、偶然にも、今日は雨林舎のお客さんという方がふたりもいらっしゃった。ありがとうございます。
タイ料理教室で作ったマンゴープリン。プリンはタイでも「プディン」といいます。レッスン用にきれいにかためたのが残ったので、自分のおやつには、ちょっとくずしてココナッツミルクをかけた。なめらかで繊細なマンゴープリンよりも、ゼラチンが少し多めのしっかりした食感に、果肉の粒が舌に残るくらいの素朴な味わいが好みです。
近所の「雨林舎」さんのゼリーケーキ。上段は缶詰フルーツのゼリー、下段はクリームをサンドしたスポンジケーキ。ゼリーには缶詰シロップが入っていて、スポンジはふわふわでなくしっとりしていて、どこか懐かしい昭和な味がする。店主が子供の頃によく食べていたという、お母さんのおやつの味なんだそうです。
子供の頃、いちばん好きだったおやつは、駅前の洋菓子屋で母が買ってくるバウムクーヘンだった。大人になってからは、話題にあがるような人気のスイーツよりも、友人が焼いて持ってきてくれる気どったところのない焼き菓子のほうが好物になった。旅先で出会う甘いものにも好みがあって、たとえばフランスの田舎で食べた何もはさんでいないマカロンは琴線に触れたし、ベトナムで食べるもち米とバナナのもっちりした組み合わせとか、電車のなかで売りにくる歯にくっつくピーナッツせんべいみたいなのとか、ちょっとあか抜けない実直な姿のほうがストンと落ち着く。
特別な美しさや能書きはないけれど、安心できてほっとなごむ味。私は甘いものがあまり得意ではないけれど、そういうおやつならするりと食べられるなぁと、最近気がついたこと。
上賀茂にある森田農園さんに行ってきました。
上賀茂の地で、4代にわたって京野菜を作りつづけている森田さん。畑のすぐそばには直売所があって、おばあちゃんが朝採りの野菜をゆっくりと選んで詰めてくれます。
万願寺とうがらしの花は清廉。畑は今、夏野菜収穫のまっただなか。
トマトもきゅうりも賀茂なすも、どれも勢いがあってぷりぷりしている。もいだヘタの先からも野菜の匂いがこぼれてきて、味をつけて厚着させるのがもったいないような力強さです。肥料には上賀茂神社の落ち葉を混ぜるんだそう。野菜がストレスなく健康であることがいちばんのおいしさやで、と教えてもらった。
お知らせ
KBS京都「おうちごはん物語~こどもの食育キャンペーン~」という番組に出ます。この森田農園さんの夏野菜を使って料理しました。キャラクターがかわいい、ちびっこ向けのミニ番組です。
8/2~8月いっぱい、毎週土曜日16:55~17:00の放送。8/11~21の平日16:50~も何度か流れる模様。何度も流れるのですが、すべて同じ内容です。
先週末は、常連さんたちのリクエストレッスン。
こんなに暑い夏なので、ついついビールを飲みたくなるようなベトナム焼き肉を作りました。しっかりと甘辛く漬けてから焼いた牛肉を、野菜やハーブと一緒にライスペーパーで巻き、腐乳(豆腐の発酵調味料)のたれにつけて食べます。現地ではサイドの野菜もたっぷり、焼き野菜はオクラやなすや空心菜が定番です。
「焼き肉屋で野菜をたのむなんて!」
そんなふうに昔、仕事の打ち上げで行った焼き肉屋であきれられたことがあったけれど、野菜がはさまらないと、どうも私は肉をおいしく食べ続けることができない。だから、ベトナムの焼き肉は性に合っているのかもしれません。
今日はとんでもない暑さで、朝に洗濯物を干すときからもう、ベランダのサンダルが裸足では履けないくらいに熱くなっていた。生徒さんもみんな汗をふきふきいらっしゃって、冷たいお茶を出したらふーーーっと気持ちよさそうに飲み干している。最近、目覚まし時計よりも先に蝉の合唱が始まるので、それに近くの保育所から聞こえてくる子供たちの声が重なって、なんとなく夏休みのような気分で目がさめます。
タイ料理教室で作った、ココナッツミルク寒天。唐辛子たっぷりの料理でヒリヒリとなった食後の舌を、つるんとさわやかに癒してくれました。
透明と白、2色のシンプルな冷菓だけれど、食べた人はみんなちょっと驚く。私もタイで初めて食べたとき、「しょっぱい甘さ」にびっくりしてやみつきになった。透明の寒天にほんのひと匙加えた塩が、がつんと甘いココナッツ寒天をシャープに引き立て、あと味さっぱり。甘いの?しょっぱいの?と衝撃を受けているうちに、おいしーい!となってしまう。
タイ料理を食べていると代謝があがって、額から流れる汗も気持ちよく、頭と体がだんだんすっきりしてくるような気がします。猛暑の盛夏でも、前向きにむかえる心意気。
「パパイヤってどんなふうに実がなりますか?」(生徒さん)
「ぴーんとまっすぐ伸びる茎にぶらさがって、たわわに実ります」(私)
写真は、ベトナム南部に自生しているパパイヤの木。成長すると幹のように太くなる茎も、ふさふさと大きな葉っぱも意外にやわらかいのです。
完熟する前の青いパパイヤを使って、ベトナム料理とタイ料理、それぞれ違うサラダにしてどっさり食べました。暑いところで育った食材を体に入れると、夏バテをエイヤッと押し出してくれそうな気がする。
祇園祭のひと月は、京都では日ごと夏が元気になってゆく。この時季だけは、西日がまぶしくなる頃、お祭りに行こうと声をかけられたらサンダルをつっかけて街へ出ます。勤め人でなく、曜日感覚も乏しいような怠けものが、明るいうちから市中をうろうろできる時期はかぎられているのです。
まだ露店の出ていない日に出かけたら、山鉾町はどこものんびりした雰囲気。子供に人気の蟷螂山で、からくり人形になっている「かまきりおみくじ」を引きました。中吉だった。
宵山の深夜、翌日の山鉾巡行に晴天を願う日和神楽。お囃子の音が祇園界隈まで艶やかに響く。
今年は初めて、いろいろな山鉾でご朱印をいただきました。完結されたそれぞれの形には由緒があって、千年以上にわたるこまやかな想いがあることを知った。それを愛情深く話してくださる町内会の方々には、本当に頭がさがった。夏の京都に暮らしていてよかったなぁと思う。
涼しい夕風に吹かれてプラスチックコップのビールをすすり、華やかに連れだって歩く浴衣姿の女の子を眺めていたら、すっかり蝉が我がもの顔で鳴いていることに気がつきました。
タイ料理教室で、ガイ・ヤーン(タイ風グリルチキン)を作りました。
タイの東北部、イサーン地方の郷土料理です。甘辛くまぜあわせた調味料にひと晩ほど漬け込み、香ばしい炭火焼きにした焼き鳥。レッスンではオーブン焼きにしました。ガイ・ヤーンのおいしさの決め手は、漬け込んだらじっくりと放置すること。翌日のおいしさを想像してがまん、とにかくがまん。
現地スタイルでもち米と食べてもよし、アツアツにかぶりついてビール!となってもよし。生野菜やハーブと一緒にごはんにのっけ、酸っぱ辛いたれをかけながらかっこむ「ガイ・ヤーン丼」もおいしい。昔、タイ料理屋で働いていたときに好きだったまかない料理でした。
ベトナム北部でよく食べられている麺料理、「Bun cha/ブン・チャー」を作りました。
こんがりと網焼きにした豚肉だんご、同じくこんがりと香ばしく焼いた豚バラ肉、なますを一緒に、甘酸っぱいたれがたっぷり注がれたお椀に入れる。そこへ細い米麺のブン、生野菜やハーブを好みにとぷんとひたし、一緒くたにツルツルと食べます。アツアツでもなく、冷えているわけでもない。焼きたての肉だんごは熱いけれどたれは常温だし、シャキッとしていたハーブも焼き肉の熱でなんとなくしんなりしてしまう。お椀のなかには、不思議な「なまぬるい」世界が繰り広げられます。
食欲と胃袋がとりえだけの私が、ハノイのただならぬ蒸し暑さ(あまりの湿度に部屋のクーラーでしか洗濯物が乾かないくらいの)にまいったなぁとなったときも、なぜかブン・チャーだけは食べられる。そうだ、ブン・チャー食べよう、となるのです。
もしかすると、お椀のなかのなまぬるさが外の蒸し暑さとうまくリンクして、体のなかの味覚とも響きあうのかもしれない。暑いときの冷麺や、寒い日にすするフォーのギャップも魅力的だけれども、内と外の温度が近づくっていうのも新しい美味感覚かもなぁと、ちょっと考えてみたり。何度食べても、なかなかどうして奥深いブン・チャーなのでした。