10月のレッスンが無事に終了しました。夏に舞いもどったかのような陽気があったり、肌寒い雨の週末が続いたり……と移ろいの激しいひと月でしたが、今月もたくさんのご参加をありがとうございました。
タイ料理クラスでは、今年初めてお披露目のレシピ「パッシーユ(タイ風しょうゆ焼きそば)」を作りました。もっちりと太めの米麺に、甘くコクのある黒じょうゆをからめた大衆的な炒め麺。出てきた皿にはひとかけらの辛さもないと、侮るなかれ。卓上調味料で酸っぱく甘く塩気も足して、そしてピリッとスパイシーに、自らの手で変化をつけていくのがタイ麺ワールドの掟です。
11月1日~9日まで、料理教室ツアーを含むベトナム滞在の都合、ホームページの更新には少し遅れが出ます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
今月のレッスンより、ベトナム式バゲットサンドウィッチ「バイン・ミー」。シナモン風味の豚ハムを手作りして、大根とにんじんのなます、生野菜やハーブなどと一緒に、やわらかいフランパンにたっぷりとはさみました。
バイン・ミーの具は、パンと同じくらいごはんに似合うものが多い。この豚ハムも、おこわや米麺のトッピングにぴったりなのです。
うちの屋号は「Nam Bo/ナンボー」(ベトナム語で南部の意味)といって、ベトナム料理の贔屓も圧倒的に南部が多いわけですが、旅先に限ればここ数年は北部がへヴィローテーションしています。外国の風を受けスピーディに洗練されていくホーチミンに比べ、ハノイはまだまだベトナム独自のアナログ性を失わず、思い通りに事が運ばない加減が絶妙。私はそこに何よりも魅力を感じています。
おかげでというか、滞在時間が増えたぶん、北部料理にもずいぶんと開眼できてありがたや。ハノイといえば!の定番料理はいくつかありますが、あえて外しての食まわり日記。
変化球米麺「バイン・ダー」。ハノイからほど近い港町・ハイフォンのご当地麺で、煮詰めたサトウキビ汁を加えた赤褐色の麺は印象的です。汁麺と汁なし和え麺の2種類があり、具はかにやさつまあげなど。ベトナム麺におなじみの生野菜やハーブではなく、香りの強い青菜をサッとゆでてトッピングするのも特徴です。ハノイでは高級ホテルが林立する1等地の狭間に、どっしりと営まれる昔ながらの屋台にて感嘆。
ハノイへ来たら絶対食べたいもの!と友人が熱く語ったひと皿は、干し牛肉と青パパイヤのサラダ。なかなかマニアックです。写真では少しわかりにくいのですが、白くて細い麺のようなものが千切り青パパイヤ。で、上にはたっぷりの干し牛肉や香草やピーナッツ、甘酸っぱいドレッシングをかけていただきます。ベトナム人にとってはおやつのようですが、私には夕暮れビールの良き相棒かな。
青米おこわのアイスのっけ、トッピングは香ばしいローストココナッツ。旅仲間は甘党、私は晩酌党。昼下がりになると、ふだんはチョイスしない甘いものをあれこれ教授してもらって楽しかった。
北部家庭料理の定番おかず、高菜漬けと牛肉の炒めもの。ベトナムの高菜漬けは塩漬けあっさりタイプなので、あらゆる料理への応用が万能。食べるのも作るのも、大好きな食材のひとつです。
右上から時計回りに、トマトサラダ、豚レバーのパテ、ベトナム風ブイヤベース(白身魚とえび入りだったが食べたあと)、エシャロットソースのビーフステーキとフレンチフライ、バインミー(フランスパン)、えびのガーリックソテー。旧市街の老舗ビストロにて、垢抜けないことが得も言われぬ個性を放つベトナム的洋食の夕べでした。
ベトナムより帰国。長いお休みをありがとうございました。
今年も歩いた北部の里山。棚田の稲穂はこぼれるように実り、緑から黄金へ色づき始めていました。
旅日記はのんびり綴っていきます。
9月の料理教室が始まっています。
写真はタイ料理レッスンより、インスタントラーメンのサラダ「ヤム・ママー」。「ママー」はタイ定番のインスタント麺ブランドですが、別のインスタント麺で作ってもこう呼びます。たかが即席麺と侮るなかれ、ジャンクな雰囲気をライムの酸味やパクチーの香りがうまく引き締めて、これがなかなか病みつきに。インスタントラーメンをここまで昇華できるとは…!と感心しきりです。
明日からベトナム滞在のため、しばらくブログはお休みです。帰国後にまた、旅の記憶とともにこちらでお会いしましょう。
8月のベトナム料理レッスンより、牛肉とセロリのスープ。どっしり穏やかな牛肉ダシ、シャキッと爽快なセロリの香り、加えてトマトのほんのりした酸味が、夏バテ気味の胃袋に元気をとりもどしてくれました。ベトナムの、こんな家庭料理の飾り気ないスープは本当に飽きがきません。うちでのんびりできる日に着る、肌がすっかり慣れ親しんでいるワードローブのよう。
先月もたくさんのご参加をありがとうございました。9月レッスンの募集にあわせまして、10月のご予約受付がスタートしています。どうぞよろしくお願いします。
先の日曜日は、地元の愉快な書店「ホホホ座」にて、洋服作家の行司千絵さん(写真左)とのトークイベントでした。
活動するジャンルは違えども、ふたりの今に至るまでの話や、京都を選んで動くことの意味などをポツリポツリと語り合う、のんびりながらも大変有意義な時間となりました。ご自身にしか生み出せないものを扱っているのに、「相手がいないと作れないのです」と一寸の迷いもなく行司さんはおっしゃる。それが軸足で、自信や信念でもあり、楽しさのすべて。行司さんの物作りはいつも自分と相手との間にあるんやなぁと、私はひどく胸を打たれたのです。
ご来場の方々、ホホホ座の山下さん(写真中央)やスタッフさん、本当にありがとうございました。
アボカドで甘いクリームを作り、アイスクリームやピーナッツをのせたベトナムのおやつ。アボカドの新しい味覚を発見できます。
アボカドを甘味として食べるのは、ベトナム独特の食文化でしょうか。半分に割って種の穴が空いたところへ砂糖を詰め、実と一緒にスプーンですくって食べることもあるのだそう。練乳や砂糖とミキサーにかけて作るシェイクは定番で、栄養と元気がいっぺんに摂れるから、私はそれを朝ごはん代わりに食べるのが大好きです。
今月のおもてなしベトナム料理クラス。香ばしい焼き肉をのせた和え麺、蒸し魚と空心菜のライスペーパー手巻きなど。
毎年この時期は、近所の商店街にある農家直売所で無農薬の空心菜を買って、なるべく味や食感をそのままにたっぷりと食べる。ベトナムでは茎を細く裂いて、サラダにしたりトッピングにしたり、シャキシャキと食べるのもポピュラーなのです。
今月のタイ料理クラスのおやつ、ココナッツゼリー。ゼリーといっても南国ならでは、冷えずとも固まる寒天で作るので、フォークでさくっと切れる懐かしい雰囲気です。白いココナッツ寒天と透明の塩寒天で二味。この不思議な甘じょっぱさが、辛さ暑さで火照った体にスーッとしみわたります。
京都では送り火とともにお盆が終わり、肌にあたる風がわずかに涼しくなってきたような気がします。私の夏休みはもう少し先、日々の教室で囲むベトナムやタイ料理に元気をもらいながら、残暑を駆け抜ける心意気です。
ホーチミンの公園や路上で、竹串2本をお箸のように器用に使ってビニール袋をゴソゴソ、何やらモグモグと食べている若者たちを見かけるようになったのは数年前。袋のなかみは細切りライスペーパーの和えもので、干し牛肉やうずら卵、酸っぱい青マンゴー、香草やピーナッツなどがたっぷりと混ざり、スパイシーな醤油味が不思議とあとを引きます。むむ、ユニークなストリートスナックが誕生したなぁと関心したものです。
先日、ご希望があって初めてレッスンでお教えしました。ライスペーパーの弾力をほどよく残すためのコツ、ちょっぴりジャンクな味にしあげる塩梅など、気楽そうに見えてなかなか奥深いベトナムB級グルメの世界。私もまだまだ学ぶところが多いです。マニアックなリクエスト、ありがとうございました。
梅干しの土用干し後、副産物の梅酢と赤紫蘇で簡単しば漬けが完成。
京都人してしば漬けは大の贔屓なのですが、市販のものは味がくっきりしていて一度にたくさん食べられないこともあり、昨年から自家製で賄っています。浅漬けが好みなのは、ポリポリと肴につまみたい晩酌党ならではの所以でしょうか。
発売中の『きょうの料理』8月号(NHK出版)にイラストレシピを連載中です。
今月は「焼きなすのエスニック肉そぼろがけ」。ベトナム家庭料理で定番の1品を、身近に手に入る調味料のナムプラーだけで作れるレシピにアレンジしました。白ごはんのおかずとしてはもちろん、夏のビールのおともにも太鼓判です。
この連載に感想をくださる皆さま、本当にありがとうございます。励みになっています。今後もじわじわと、肩の力が抜けたレシピをお届けできますように。どうぞよろしくお願いします。
今月のタイ料理クラスで作った、タイ風焼き鳥「ガイヤーン」。現地では炭火焼きですが、レッスンではオーブンで焼いて香ばしさを再現しています。
レッスン翌日、私のひそかな楽しみはガイヤーン丼。実習の都合で少し残ってしまうので、それをまたのんびりと焼いて日々のごはんにします。レッスンでは蒸したもち米と食べるのですが、自分用には冷凍のタイ米を温め直して、残っている生野菜や香菜もわさわさとのせてワンボール仕立て。
これは、昔に働いていたタイ料理屋のまかないが原点です。お店では、ときどき残りが出たときだけに作ってもらえる、シェフのスペシャリテだったのでした。
毎年、いちばん人出で賑わう宵々山から巡行までの頃は出かけず、ひと足先の鉾立て山立てあたりに散歩するのが好きな祇園祭。お世話になっている電器屋さんがテキパキと鉾の提灯を点けていて、そんな姿に出くわすのもなんとなくホッとしたり。
いつも同じ鉾を見に行って、同じ場所でビールを飲んで、同じ山で和菓子を買う。そんな行動に飽きないのは、きっと自分が京都に暮らしているから。お祭りというのは外へ開けていてもローカルなもので、だからこそ地元民には、ハレの空気を纏いながらも力強い日常感があるのだと思います。